2016年12月18日日曜日

☆☆ 家主様相談・建替予定物件の原状回復義務は? ☆☆

🔶 建替予定の退去立会 ⇒ 入居者故意・過失損傷の修繕費用負担・・・?🔶


■ 築50年くらいのアパート所有の家主様のご相談で、修繕費用等と家賃の問題で建替えを前提とする明渡を入居者と確約し、退去時の原状回復費の取り扱いの相談でした。

🔶 顧問弁護士の見解 🔶
■ 原則として、原状回復工事費用請求は賃借人の善管注意義務違反を理由とする損害賠償請求です。よって、原状回復をするか否かのことが、当該損害賠償義務に影響は受けないとのことです。
東京地裁判例】
賃借人が賃貸人に対し原状回復義務の履行にかえて、原状回復工事の費用として1,661,100円を支払ったが、賃貸人は何らの原状回復をすることなく新賃借人に賃借したことから、賃借人が支払った費用の返還を求めた事案において、「賃借人は、賃貸人に原状回復の内容と金額を示されており、その内容と金額を納得して自ら原状回復工事を実施しない代わりに1,661,100円を支払うことを承諾したのであり、その内容及び金額はいずれも原状回復としては妥当なものであったことが認められることから、右承諾につき賃借人に錯誤があったとは認められない(賃貸人が、現実に工事をしたかどうかは原状回復義務の存否には関係がない)。」として、賃借人の請求を棄却した。
 この判例から、現実に原状回復工事を実施しなくても、その費用を請求できるとした点から、建物を建て替えるために原状回復工事をしない場合でも、原状回復工事の費用を請求することはできるように思えます。
 しかし、上記判例は今後において本物件で賃貸経営を継続することを予定しており、将来において原状回復工事をすることが想定されます。その反面、今回の事例は建替予定が前提で、将来的に原状回復工事を想定されない事案にまで妥当するとは限らないと思われる。
 今回の事例は、賃貸人に対して原状回復費用に相当する損害が生じていないとの評価も可能で、将来的に原状回復工事の想定がない場合まで、原状回復費用を請求することは不適切な行為とも思われます。
 
🔶 実務アドバイス等 🔶
 法的には、故意・過失による原状回復費用を借主が負担するのは当然と言えます。それは、あくまで借主の代わりに貸主が原状回復工事を行い、原状回復工事を行うから借主は納得できるものと思われます。
 しかし、その工事を実施せずに請求のみを行うことは借主としても納得しにくいものでしょう。
 今回の事例については、法的・公平的観点とは別にして、借主の退去理由・管理行為への協力度・居住期間・貸主の利益度等を考慮し、後で感情的なこととしないためにも中立的な処理をされることをお勧めしました。

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